石けん百貨ブランドの製品に『石けん百貨 油汚れに強い台所用石けん』(以下:『油汚れに強い台所用石けん』)がありますが、洗浄力アップのためにセスキ炭酸ソーダを配合しているのが特徴です。
使っていて「これすごい!」というほどの衝撃は実感できないものの、クエン酸を汚れに見立てての洗浄テストでは、セスキ配合の効果が明確に出ました。でもその割には「皮脂が持っていかれて手がガサガサする」といった感覚がないのは、手に優しいセスキ炭酸ソーダならではの、良い働きのおかげなのだろうと思います。
少し長いですが、スタッフが行った洗浄テストの様子をご紹介しますね。
はじめに
石鹸の特性には、
(1)水中の硬度成分(特にカルシウムイオン)に出会うと、水に溶けない石鹸カスに変化する。
(2)アルカリ性だから酸性の物質に出会うと中和されて洗浄力を失う。
などがありますが、日本では海外ほど水道水の硬度は高くないため、石鹸の洗浄力を生かすには、硬度よりも【酸に対する対策】が大切です。
食器についた汚れは大抵が酸性で、また衣類についた皮脂汚れなども酸性物質が主です。
洗濯用の場合は、アルカリ緩衝剤として炭酸塩やケイ酸塩を配合しますが、台所用の石鹸の場合、主に手洗いで使用するため、手荒れのしやすいそれらアルカリ緩衝剤は配合しないのが一般的です。
そんな中、『油汚れに強い台所用石けん』は、手に優しいセスキ炭酸ソーダをアルカリ緩衝材として配合することに成功しました。
※液体石鹸にアルカリ剤を配合すると固化するため、その防止のためにエタノールを配合しますが、アルカリ緩衝作用を発揮させるには相当量のエタノールが必要です。エタノールの配合が特に問題があるわけではありませんが、エタノール臭がきつくなるため、苦手な人もいると思います。ちょっときつい炭酸塩ではなく、手にも優しいセスキ炭酸ソーダを採用し、エタノール無配合で作れたことは、画期的なことと言えましょう。
そこで、無添剤の液体石鹸と、セスキ炭酸ソーダを配合した『油汚れに強い台所用石けん』との、油汚れに対する洗浄力の比較テストを行いました。
クエン酸を汚れに見立てて
食器の油汚れは酸性ですから、クエン酸を油汚れに見立てて洗浄テストをしました。
(手に入れやすい物質として、普段から使っているナチュクリ洗剤の中で最も酸が強いクエン酸を選びました。)
純石けん分30%の無添剤の液体石鹸(A)と、「油汚れに強い台所用石けん」(B)との、酸に対する強さを比較したテストです。
【1】
A,Bそれぞれ50ccに水150ccを入れ、攪拌する。
【2】
A,Bそれぞれにクエン酸5gを入れる。
【3】
クエン酸投入後攪拌すると、Aの泡は消えるが、Bは泡立っている。
【4】
数分後、結果は純石けんのみの液体石鹸は酸に中和されて泡が消え、石鹸カス(酸性石鹸)が生成した。Bはまだ泡立ち、酸性石鹸は生成していない。
【5】
30分後。Bはまだ泡立ち、酸性石鹸は生成していない。
【6】
pHを測ると、Aは9.5から6に、B9.5から8になった。
pHの測定は家庭でも再現できるよう、リトマス試験紙を用いた。
おわりに
石鹸の水溶液は常温でpH10前後のアルカリ性で、アルカリ性の環境下で洗浄力を発揮する石鹸は酸に出会うと中和されて洗浄力がなくなるという特徴がよくわかる実験でした。
今回の実験では比較的強い酸(クエン酸)を使ったため酸性石鹸が生成しました。酸性石鹸とは石鹸カスの一種で、油汚れのひどいものを石鹸不足の状態で洗ったときなどにできる、水に溶けないベタベタした物質のことです。
石鹸の「酸に弱い」という特徴は、洗濯や食器洗いには弱点といえますが、すぐに界面活性作用を失うため人や環境に優しい、という利点でもあります。
石鹸は薬機法(旧薬事法)や家庭用品品質表示法によって「化粧石鹸」「洗濯用石鹸」「台所用石鹸」と種類が分かれていますが、本来は何にでも使えます。そのため「台所用」「洗濯用」と表示された石鹸を身体や髪に使う人も少なくないことも存じています。なので弊社では『油汚れに強い台所用石けん』以外の液体石鹸にはアルカリ剤を配合していません。
無添剤の石鹸は、用途に応じて炭酸塩やセスキ炭酸ソーダをなどのアルカリ剤を併用することで、本来の石鹸の洗浄力を発揮させることができます。
実験に用いた台所用液体石鹸:
- A 無添剤の液体石けん
(成分:純石けん分[30%、脂肪酸カリウム]、グリセリン、クエン酸ナトリウム)pH9.5 - B 石けん百貨 油汚れに強い台所用石けん
(成分:純石けん分[28%、脂肪酸カリウム]、セスキ炭酸ナトリウム、グリセリン)pH9.5