大奥の女性も愛用「ヘチマ水」

ヘチマ水作りに最適な9月

この夏ヘチマ栽培をされた方も多いでしょう。窓際に植えて日除けに、若い実は食用に、熟した実からはタワシが作れ、咳・痰・利尿の民間薬になり、小学生の理科教材にもなる頼もしい植物ですが、中でも女性に嬉しいヘチマ製品が美人水こと「ヘチマ水」。そのヘチマ水採取に一番適しているのが中秋の名月の頃、つまり9月中旬だそうです。

採取法はごくシンプルで、地上30~90cmほどのところでヘチマの蔓を切り、切り口を清潔な一升瓶などの容器に差し込みます。ゴミなどが入り込まないよう瓶の口は綿などをきっちり詰めておきましょう。そのまま一昼夜おくと、多いときは2リットルも溜まるそうです。防腐剤が入らない自家製品は腐りやすいので煮沸消毒をして濾過し、冷蔵庫に保管すると長く使えます。

美肌成分がたっぷり

含まれる有効成分はヘチマサポニン、硝酸カリウム、ペクチン、タンパク質、糖分など、いずれも美肌作りに効果的なものばかり。昔の女性もその効果はよく知っていたらしく、江戸時代には小石川御薬園(現・小石川植物園)で採れたヘチマ水が「糸瓜水(しかすい)」という名で大奥に届けられていました。ある年は一石一斗三升(203.4リットル = 灯油用ポリタンク約11個分)も納めたとの記録もあり、その人気ぶりが伺えます。

今よりは涼しかったであろう江戸の夏ですが、それでも暑さは辛いもの。疲れた肌のため、江戸の女性も新物のヘチマ水を待ち侘びたことでしょう。きれいになりたい女心は今も昔も変わりませんね。

※過去のメールマガジン「石けん百貨通信 2010年7月」のコラムを再掲しています。一部加筆修正しています。

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